企業にとって、大きな打撃になりかねない事態が「ペイオフ」です。大手の金融機関なら「ペイオフのリスクはない」と完全には断定できません。ただ、具体的なペイオフ対策をしないまま、資金を金融機関に預けている企業も多いでしょう。この記事では、ペイオフが必要か不要か、また、必要な場合はどうすればいいのかを解説します。
ペイオフとは?なぜ企業は大きな損失を被ってしまうのか
金融機関が破綻した場合に起こる現象のひとつが「ペイオフ」です。ペイオフが発動すると、金融機関に預金していた企業には大きな影響があります。以下、ペイオフの概要を説明します。
経営破綻による払い戻しのこと
もしも金融機関が破綻すれば、即座に、預貯金者に預貯金を払い戻さなくてはなりません。これがペイオフです。基本的には、金融機関にお金がある限り、預貯金者に全額を返すことになります。ただ、経営破綻した金融機関には、すでに払い戻しを行えるだけの余力が残されていないケースも多いでしょう。そのような場合を見越し、預金保険法ではペイオフのルールが決められています。
まず、金融機関は預貯金の元本1000万円とその利子は必ず預貯金者に返さなくてはなりません。しかし、それ以上の額に関しては、金融機関の受けた損害の状況によって変動します。つまり、多額の預貯金をしていた人、企業には、大半のお金が払い戻されなくなる可能性があるのです。一般的には金融機関に関してペイオフという場合、「金融機関の経営破綻によって、預貯金の払い戻しが一部カットされること」を指します。
日本におけるペイオフの歴史
1971年、日本はアメリカを参考にして、ペイオフ制度を取り入れました。ただ、行動経済成長期の余波が残っていた時代には、金融機関の破綻自体が少なく、ペイオフ制度が採用されることもありませんでした。それでも、バブル経済が崩壊した1990年代以降は、一部金融機関の経営状況が悪化していきます。そして、預金保険法に基づき、保険という形で預貯金者にペイオフを行う銀行が出てきました。そのかわり、2002年4月までは、元本・利子の全額を払い戻させるための特定が設けられていました。
しかし、2005年4月から現行のペイオフ制度へと移行していきます。これにより、当座預金,決済用預金を除いて、全額を保護する特例制度はなくなりました。すなわち、仮にペイオフが発動したとすれば、保険をもってしても、金融機関への預貯金が全額返ってこない可能性は高くなったのです。2010年には日本振興銀行が経営破綻を起こし、改正後のペイオフが初めて発動しました。このとき、預貯金の大半を失った企業、個人が多く現れました。
ペイオフ対策とは?メリットとデメリットを解説
実際にペイオフを発動させた金融機関が出たために、「ペイオフ対策」という言葉が誕生しました。つまり、ペイオフの損害を最小限に抑える工夫のことです。ここからは、ペイオフ対策の具体例と、それぞれのメリットとデメリットを挙げていきます。
銀行を分散させる
メインバンク以外にも、財産を預ける銀行が分散していれば、ペイオフが発動しても被害は少なくなります。実際に、大手企業の中には複数の銀行を使い分けているところも少なくありません。現行のペイオフ制度では預貯金の全額返還が難しくなっているので、そもそもの金額自体を少なくできるのはメリットでしょう。デメリットとしては、銀行が多くなると事務処理が面倒になってしまうことです。さらに、普通預金が少ないと、そこで計算される利子も低くなってしまいます。
当座預金に変える
預金保険法では、当座預金と決済用預金の特例が認められています。すなわち、ペイオフが発動したとしても、当座預金と決済用預金なら全額が払い戻される可能性は残されているのです。普通預金を使っているのであれば、早い段階で当座預金に変えておくのはペイオフ対策になるでしょう。小切手や手形の振出ができるなど、そもそも当座預金は企業経営に向いている形式でもあります。
一方で、当座預金の開設には審査があります。万が一審査を通過できなかった場合、その銀行ではすぐに当座預金を開設できません。気軽に開設できるわけではない点が、当座預金のデメリットだといえます。そのほか、当座預金にしても特例が適用されない確率はあります。絶対に安全なペイオフ対策でない点も要注意です。
金融資産を運用する
預貯金という形で資金を運用している以上、ペイオフを完全に避けることはできません。そこで、ペイオフ制度で保証されていない、1000万円以上の資金については金融資産で運用するのもひとつの対策です。たとえば、株式や国債などは換金性が高く、必要になればすぐに現金にできます。仮想通貨などの新しい金融資産も成長率が高く、うまくいけば効率的に資金を増やせるのはメリットです。
そのかわり、金融資産にはリスクも存在します。確実に伸びると思われていた銘柄が急に下落することも珍しくありません。預貯金と比べて増える割合は高いものの、損害が出るまでのスピードも非常に速いといえます。金融資産に手を出す際には税理士をはじめとして、その道に詳しい人間のアドバイスが必須です。
結局ペイオフ対策は必要か?おすすめの相談先は
いろいろなペイオフ対策を調べていくと、「本当に必要か?」と疑問に思うこともあるでしょう。以下、ペイオフ対策の必要性と、おすすめの相談先を解説します。
場合によっては必要なペイオフ対策
ペイオフが発動するリスクはゼロといえないので、「対策は不要」とはいえません。特に、ペイオフで打撃を受けやすい条件が揃っているなら、必要な対策を実践していきましょう。たとえば、ペイオフで払い戻しがカットされる可能性を残す「預貯金1000万円以上」の企業、個人事業主は対策をするべきです。仮に預貯金を分散させていたとしても、銀行同士が合併すると1000万円を超えてしまうことがあります。さらに、外国の銀行、日本の銀行の海外支店は、保護対象外です。ペイオフが発動すれば、大きな損失が出かねません。海外の銀行に預貯金しているなら、リスクヘッジを考えることが大事です。
ペイオフ対策は誰に相談すればいいのか
実際にペイオフ対策を行うなら、専門家の力を借りましょう。なぜなら、ペイオフ対策には幅広い知識が求められるからです。まずはペイオフが発動する条件を知っていなくてはなりません。どのような状況が危険で、どうすれば預貯金を守れるのかに精通していることが必須です。そのうえで、ペイオフに関連する預金保険法、ペイオフと保護の事例も理解していなくてはなりません。企業経営者、個人事業主でここまでの知識を吸収している人は少なく、専門家の助けが重要なのです。
おすすめなのは、税理士に相談することです。税理士は税制の専門家である一方で、企業経営についても高い知見を備えています。いわば、税理士は資金運用のプロフェッショナルだといえるでしょう。彼らは企業が直面するリスクを想定し、回避するための解決策を示せます。当然ながら、ペイオフの危険も理解しています。ペイオフが発動する前にどのような立ち回りをするべきか、税理士は実践的なアドバイスを投げかけられます。仮にペイオフ対策として金融資産を運用したいときも、税理士ならサポート可能でしょう。

