千代田区 税理士

中小企業がわざと赤字にするデメリット

「赤字決算」と聞いて、経営危機や倒産などネガティブな印象を持つ方も少なくありません。会社を経営していると儲かっている時もあれば、支出が収入を上回り決算で赤字を出してしまうこともあるでしょう。しかし、実際は黒字でも、あえて赤字決算にするケースがあります。なぜ、わざと決算書を赤字にするのでしょうか?中小企業にとって、赤字決算が及ぼす影響について解説します。

赤字決算とは?

決算とは、会社が決算月までの1年間の収入と支出を計算して、利益あるいは損失を算出するものです。その年度に利益がでれば黒字決算、損失がでれば赤字決算となります。損失がでる状態が続くと債務超過に陥り倒産に至るため赤字決算にはマイナスのイメージを持つ方も少なくありません。しかし、単年度の赤字決算はその期間において損失がでたということであり、すぐに債務超過になるわけではありません。また、決算書でみる利益には「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」と5つの種類があり、どの利益が赤字になっているかによって会社の問題点がわかります。

会社が支払う税金というと「法人税」を思い浮かべる方が多いことでしょう。法人税は、会社の所得に対して課税されるもので「各事業年度の所得に対する法人税」「各連結事業年度の所得に対する法人税」「特別法人税」と3つの種類があります。一般的なイメージの法人税は「各事業年度の所得に対する法人税」のことで、会計年度ごとの法人の所得に対して課税されるものです。

法人税の基となる「所得」というのは、「利益」とは異なります。「所得」とは、税法に基づく税務の言葉であり、「利益」は会社の税務状態を表す会計の言葉です。法人税法の「所得」は「益金から損金を引いたもの」、「利益」は「収益から損失を引いたもの」ということになります。例えば、会計上では費用になっても、法人税法上では損金として処理ができない交際費などが当てはまります。そのため「所得」と「利益」は同じ金額にならないことを理解しておく必要があります。

法人税は、企業の資本金や所得によって税率が異なります。会社の所得にかかる法人税と住民税、事業税を合わせた実効税率に「税引前当期純利益」を掛けることで、おおよその納税額を把握することが可能です。また、税金には一定の条件を満たせば利用できる「軽減措置」がありますが、法人税も例外ではなく、資本金が1億円以下で一定の条件を満たす中小法人は軽減措置の対象となり、税率の軽減など税制上の優遇措置が講じられています。

法人税に関わる「税引前当期純利益」とは、法人税などの税金を支払う前の利益のことを指します。事業活動で得た利益から、不動産の売却というような臨時的な出来事で生じた特別利益を加算し、突発的な災害などで損害を受けて生じた特別損失を減算します。企業の本業だけでなく、副業や臨時的に生じた損益を含めて算出される利益のため、その期間に得た純粋な利益という意味合いが強いものです。

わざと赤字決算にする理由

中小企業が本来は利益が出ているにも関わらず、わざと赤字決算にする大きな理由は節税対策です。会社の経営は、基本的には利益を追求し黒字を目指します。継続して利益がでれば、自己資金や資産も増え事業も発展していくでしょう。しかし、利益がでれば支払わなければならない税金の額も増えてしまいます。企業が支払う税金の中には所得に対して発生する法人税があり、利益が出て黒字決算になれば法人税を支払うことになります。一方、支出が収入を上回り損失を出してしまうと赤字決算になり、所得が発生しないため法人税は払わなくて済みます。そのため、中小企業の中には節税対策としてわざと赤字決算にするケースがあります。

ただし、赤字になった場合でも納税しなければならない税金もあります。売り上げが1,000万以上の企業は、決算に関係なく消費税を納めなければなりません。また、所得に対する法人税は免除になっても、法人住民税の均等割りは赤字でも納付することが必要です。契約時などに必要な印紙税や会社所有の自動車税なども赤字の有無に関わらず納めるものです。

また、赤字が発生した次年度以降10年間の間に黒字になった時、その黒字と赤字を相殺できる「繰越欠損金控除」の条件を満たせば利用することが可能です。つまり、赤字を繰り越して黒字になった年の利益と相殺し、黒字になった年の所得を減らすことで法人税が安くなるため節税に繋がるということになります。「欠損金の繰戻しによる還付」の制度も利用できます。

中小企業は、前期が黒字で法人税を納付していた場合、今期で赤字決算になると前期に支払った法人税の還付を請求できる制度があります。青色申告書である確定申告書を提出していることなどの条件があり、還付される金額は前期に支払った法人税額が上限となっています。ただし、節税対策として赤字決算を行うのは「本来は儲かっている会社がすること」だということを覚えておきましょう。資金繰りが逼迫している状態や業績不振である時には、節税対策よりも業績を上げ黒字に転換することの方が急がれます。

わざと赤字決算にするデメリット

金融機関からの融資が難しくなる

赤字決算にするデメリットのひとつは「金融機関からの融資が難しくなる」ということです。多くの中小企業は、金融機関から融資を受けて運転資金を確保しています。金融機関では融資の際に審査を行いますが、赤字決算では査定が下がってしまう可能性があります。金融機関からの融資を受けていれば、決算後に金融機関では決算書を確認します。その時に毎年のように赤字が続いていると、返済能力がないと見なされてしまうでしょう。追加の融資を相談しても叶わないかもしれません。

赤字決算が2期連続で出た場合は、融資が打ち切られたり一括返済を求められたりするケースもあります。会社の評価も下がり、一旦下がった評価はその後に黒字決算になったとしても、すぐに上がるとは限りません。つまり、赤字決算にすると融資を受けることが難しくなり、運転資金がなくなり倒産する危険性が高まるということになります。

ただし、赤字決算でも金融機関からの評価が下がらないケースもあります。創業したばかりで、合理的な事業計画のもとの赤字決算である場合や、会社に売却が可能な資産があるため返済能力に問題がない場合などは、評価が下がりません。また、自然災害など外的要因によるものや設備投資、役員の退職金など一時的なことが要因で赤字になっている場合は、次年度以降に黒字になることが予想されるため評価は下がりにくいとされています。赤字決算で利用できる「繰越欠損金控除」は、創業時の赤字や一時的な赤字の救済措置と捉えることができます。

税務署の調査が入る可能性もある

赤字でも税務署の調査が入る可能性はあります。「赤字だから税務署の調査は無いだろう」と思っていても、不正を行っていないかどうかなどを調査される場合があるのです。「繰越欠損金控除」などの関係もあり、虚偽や不正申告による赤字決算は税務署でも調査の対象となるケースがあるので注意が必要です。