千代田区 税理士

純資産がマイナスの意味

様々な企業の決算書を見ている時に、たまに純資産がマイナスになっている状況に遭遇することがあります。純資産がマイナスになっている場合、その企業はどういった状態に置かれているのでしょうか。また、もしも純資産がマイナスになってしまった場合、プラスに戻すことができるのかも気になるところです。今回は、純資産がマイナスになった状態について、その意味や対策などについて解説します。

純資産とは

そもそも貸借対照表における純資産とは、資産から負債を引いた額のことです。資産には現金、預金、売掛金、建物や設備などの固定資産といった、金銭そのものや換金できるだけの価値があるものが含まれ、負債には借入金や買掛金、手形債務などの支払うべきお金や返済が必要なお金などが含まれます。資産から負債を引くことで現在その企業が保有している正味の財産の額が判明しますが、これこそがまさに純資産の正体なのです。

これは企業にとっての貯蓄であり、単純に考えればこの純資産が多ければ多いほど、その企業はお金持ちということになります。言い換えれば、これから先設備投資や商品開発などでお金を使う余裕が残っているということです。純資産は企業としての体力がどれだけあるかを示す指標のひとつと言えるでしょう。

純資産がマイナスになった状況とは

純資産がマイナスになるということは、即ち資産よりも負債の値が大きいということです。つまり、企業が仮にお金に換えられるものを全てお金に換えて借金の返済や様々な料金の支払いに当てたとしても、まだ借金が残ってしまう状態を意味します。換金価値のあるものよりも支払うべき債務の額の方が大きいことから、この状態を「債務超過」と呼びます。

債務超過は、主に借入金額が増えてきた時に発生します。借入をした時点では返済すべき金額が増えますから負債が増えますが、同時に現金が増えるため資産も増えます。しかし、この現金は日々仕入れや経費に使用されますから、使った分を売上で稼げなければ徐々に現金、すなわち資産は減っていきます。現金が減るスピードが返済スピードよりも早くなってしまうと、資産は少なくなる一方です。こうして、資産よりも負債が小さい、あるいは資産と負債が同額だったのが、資産の減少によって負債が大きくなってしまい、債務超過の状況に陥ってしまうのです。

また、商品を製造して販売する際に、原価と製造コストの合計よりも販売価格が小さくなった場合にも債務超過が発生するケースがあります。特にこのケースが発生しやすいのが市場において価格競争が起きている状態で、競合他社の製品よりも安く販売するために技術の進歩などによるコストカットを待たずに値下げを行い続けた結果、原料の調達費と製造コストの合計を販売価格が下回った場合、たとえ商品が売れたとしても売れた分だけ損が発生する「逆ざや」が発生します。この逆ざやが解消できないまま商品を売り続けることで、結果として「商品は売れて売上も好調なのに債務超過が起きた」というケースが起こり得るのです。

純資産マイナス(債務超過)でも倒産しない理由

債務超過が起きても、ただちに会社が倒産してしまうわけではありません。中小企業の場合、役員借入金の額が大きいため貸借対照表において債務超過の状態になっているケースがあります。しかし、役員借入金は金融機関からの借入と異なり、貸した役員と会社の資金状況次第で返済時期を調整できます。開業の際に必要な資金の不足分を役員借入金で賄ったケースなどは、開業直後に債務超過に陥っている状態となっていますが、今後の売上や業績次第ではすぐに債務超過を脱することができる場合もあります。

一方、債務超過が長期間続いた場合、銀行から資金の借入を行うことが難しくなります。銀行としては貸し倒れリスクを避けるためにも、返済の見込みのある企業に対して融資を行う必要がありますから、債務超過を起こしている企業にはその見込みがないと判断されて融資を断られる可能性が高くなるのです。資金の借入ができなくなれば、やがて運転資金が尽きて企業が存続できなくなり、倒産してしまうでしょう。債務超過を起こしても直ちに企業が倒産するわけではありませんが、この状態が長く続くことは企業の存亡に関わる事態と言えます。

純資産マイナス(債務超過)を解消する方法

もしも自分の会社が債務超過に陥ってしまった場合、どのような対策を講じるべきなのでしょうか。方法はいくつか存在します。以下では、債務超過を解消するために有効な方法について見ていきましょう。

経営状況を改善し、売上を伸ばす

最も確実かつ効果的な方法が、経営状況の改善です。現在負債が増加している原因を探り、コストカットや生産体制の見直し、経営方針の転換などを行い、売上を伸ばすための様々な改革を断行します。もちろん、そのためにはリストラや給料のカット、採算の取れない部門の廃止や事業撤退など、従業員や会社全体に痛みを伴う方策を取らざるを得ない場合もあるでしょう。しかし、会社を存続させるためには様々な犠牲を払うことも覚悟して、改革を断行する必要があるのです。その結果、経営状況の立て直しに成功して商品の売上を伸ばすことができれば、債務超過も自ずと解消することでしょう。

借入金を資本金に振り替える

借入金を資本金に振り替えてしまうことで、債務を減らし、資産にしてしまうという方法もあります。例えば、先述した役員借入金など、経営陣が企業に対して貸しているお金について、経営陣が債権を放棄して会社に対して出資したお金という扱いにしてしまうのです。これにより、企業側は役員や経営者に対してお金を返済する義務がなくなりますから、負債はなくなります。ただし、役員からの借入金を出資金にした場合、その役員は企業に対する出資者という扱いになりますから、経営会議などにおいて発言力が増大することが考えられるでしょう。しかし裏を返せば、その役員がより経営に積極的に参加してくれるということでもあるため、一概に悪いこととは言い切れません。

遊休資産を売却して得た資金を返済に充てる

遊休資産の売却によって返済のためのお金を作るのは、一見すると場当たり的な対応に見えますが、少なくとも債務の額は減少するため有効な手段の一つです。また、総資産を圧縮することで経営効率の指標の一つである「総資本対経常利益率」が改善する効果もあります。この総資本対経常利益率は、経常利益を総資産で割った値で、所有する総資産を活用してどれだけの経常利益を生み出したかを測ることが可能です。同額の経常利益であれば、総資産が少ないほうが効率よく利益を出せていると言えます。この総資本対経常利益率の値が大きいと、銀行からの格付けが向上するなどの恩恵を受けることが可能です。

出資者を増やす

会社への出資金が増えれば、負債を増やすことなく資産を増やすことが可能です。借り入れによって資金を増やすのではなく、出資してもらう人を増やすことで資金調達を行うようにすると良いでしょう。もちろん、そのためには出資者を集めなければなりませんし、出資者にとって自分の会社への投資が魅力のあるものだとアピールする必要があります。債務超過を起こしている場合は出資者も及び腰になってしまうでしょうから、改善を行う明確なビジョンと、売上を回復するための具体的な方策をしっかりと提示しなければなりません。