元入金は計算時に様々な事が影響します。その結果貸借対照表で数字が合わなかったり、マイナスになってしまったりして、自分の計算が間違えているのではと不安になる事も少なくありません。そこでそもそも元入金とはどういうものかや、元入金と資本金との違い、それから元入金の計算方法と仕訳例なども合わせて詳しく見ていきましょう。
元入金とは何か
元入金とは主に個人事業主の賃借対照表で使用される純資産における勘定科目の1つです。言うなれば個人事業を行う上での元手となるお金で、法人だと資本金にあたるものです。
例えば物を売ったり、インターネットでウェブ制作の請負といった仕事を行なう時に、売る為の商品を仕入れたりウェブ制作を行うパソコン機器等を揃えなければなりません。こうした準備を行なう時に元手がかかります。元入金はその元手を指す勘定科目です。
個人事業主は、自分で仕事を始める時に必要なものを揃えますが、その時の費用は自分で身銭を切るという事も少なくありません。そして個人事業主の出資と仕事で儲かった利益が合計されるので、元入金が毎年変動する事が多いです。一方法人の資本金はこういう身銭を切るという事は基本的にはないので、変動する事はほとんどないです。
元入金と資本金の違いとは
個人事業主の元入金は、法人で言う資本金に該当します。しかし全く同じというものでもなく、いくつか違いがあります。まず性質の違いです。個人事業主が仕事を始める時に、開業届を税務署に出しますが、この時に資金を用意する必要はないです。元入金は帳簿上で計上するものなので、仕事を始める時はなくても問題ありません。
一方法人が仕事を始める時は、法人設立届出書を税務署に出して、さらに法務局へ会社設立の登記申請を行うのですが、この時にある程度の資本金がきちんと事業用の口座に入っているかをチェックされるので、法人は開業時には資本金が必要です。
また社会的な信用度も違います。個人事業主における元入金はあくまで帳簿上の数字です。実際にお金が入金されているという事が証明出来なくても大して問題にはなりません。しかし資本金の場合は違います。会社を設立する時に事業用口座がきちんと作られ、そこにお金が入っているかが、銀行等の金融機関から資金の融資を受けられているのかという事の証明にもつながり、それが会社の信用度にもつながるので重要です。
他にも処理上でも違いがあります。例えば損益の計算をする場合、元入金だとその年の損益等は来年度に持ち越されるので、個人事業主が会計上の計算を行うのは容易です。
しかし法人の場合、その期の損益は来年度には資本金の一部として組み込まれずに、利益剰余金として計上されるので、会計計算に多少手間がかかります。
個人事業主の場合、事業で出た損益は毎年変わります。元入金に関しては、その金額をそのまま来年度に組み込む事がほとんどなので、額が毎年変わるというのが一般的です。
では法人はどうかというと、資本金と利益剰余金は分けて考えます。その為資本金は、増資や減資等はっきりとした手続きを行わない限り、変わる事はありません。
会計処理の問題でも、元入金の場合、その年に赤字が出てしまうとマイナスとなってしまう事がありますが、資本金の場合は基本的に変動はないので、仮に事業で損益を出してしまったとしても、マイナス処理は行われません。
元入金の計算方法
元入金の計算方法はどうすれば良いかというと、「翌期首の元入金=前期末の元入金+所得+事業主借-事業主貸」という感じで行います。難しい専門用語が多いので混乱しがちですが、分かりやすい言葉で言い換えると、所得は青色申告特別控除前の所得金額つまり当座の損益を表します。そして事業主借は事業以外からの入金という事です。
つまり個人事業主が身銭を切って事業にお金を貸すというケースですが、逆に事業資金側から考えて、事業主がお金を借りているという風に理解すると分かりやすくなります。
例えば事業用として使っているコピー用紙がなくなってしまったので、普段プライベートで使っている私用のコピー用紙を代わりに使うというような事です。
一方事業主貸とは、字の通りで事業主が貸すという事ですから、事業のお金を貸すという事です。具体的に言うと、事業資金として考えていたお金をプライベートの生活費として使うというような事です。このように難しい専門用語も、分かりやすいもので例える事で一気に理解しやすくなり、計算もしやすくなります。
さらに決算を行う時は、事前に事業主借と事業主貸は相殺されます。その結果事業主貸つまり事業資金の一部を、生活費に使ってしまった額の方が、事業主借つまり身銭を切って事業にお金を貸す額よりも多ければ、元入金は減りますし、逆の場合は増加するという事です。
元入金の仕訳例
元入金の仕訳例を見ていきます。基本的に元入金は個人事業主が仕事をしていく上での元手金なので、使用する事はほとんどありません。仕事を始める時に用意した現金を仕分けしたら、その期中は事業主借と事業主貸という名目で使用していきましょう。会計ソフトを使って管理する場合は、最初に元入金を入力しておけば、翌期の元入金も自動で計算をしてくれるので非常に便利ですし楽です。
個人事業を始める時に元手となる資金を事前に準備したのであれば、元入金を使用して処理します。例えば仕事を始める時に30万円を用意した場合、借方には「普通預金300000」、貸方には「元入金300000」と入力しましょう。
事業主貸が事業主借よりも多かった場合は、元入金が減ります。例えば決算時に事業主貸が50万円で、事業主借が20万円だった場合は、借方に「事業主借200000」、相殺した「元入金300000」、そして貸方「事業主貸500000」というように仕訳します。
逆に事業主借が事業主貸よりも多かった場合も差額を相殺するという形で仕訳しましょう。例えば決算時に事業主借の残高が70万円で、事業主貸が40万円だったとすると、借方に事業主借の70万円、貸方には事業主貸の40万円と元入金30万円というように仕分けをします。
このように元入金の仕訳は最初難しく感じるかもしれませんが、用語とやり方さえ理解してしまえば、それほど難しくないですし細かい計算は入力ソフトがやってくれるのでそれほど心配する必要はありません。
元入金の計上が必要な理由
何故元入金を計上しなければならないのかというと、個人事業用の資金とプライベート用のお金をきちんと分けておく為に必要だからです。特に個人で仕事をしていると、プライベート用のお金を事業用資金へと入れるケースも少なくありません。しかしそんな事を繰り返していると、プライベート用のお金はどんどんなくなっていってしまいます。
そうならない為に、ある程度線引きして明確に数値化しておく事が重要です。そうする事でプライベートのお金を個人事業用に次々とつぎ込む事は抑える事が出来ます。
また個人で仕事を行う場合、少ない開業資金でも行える仕事は色々あります。こうした時でも元入金に関してはきちんと計上しておくと良いです。何故なら青色申告特別控除を受ける時に必要な勘定科目の1つだからです。賃借対照表を作る時に、借方と貸方の金額を一致させる必要があります。
しかし事業用の経費をプライベート用のお金を使って、さらに会計処理していないと金額が合わなくなってしまう恐れがあるので、金額の大小は関わらず、元入金は個人で仕事を始める時に計上しておくと安心です。
元入金の計算方法は、難しい専門用語を簡単な言葉に変換してしまえば意外と簡単
元入金の計算方法や、事業主貸に事業主借といった難しい言葉が並んでいるのを見ると、つい逃げたくなる人も多いかもしれません。しかし難しい専門用語も分かりやすい言葉に変換してみれば理解しやすいですし、それほど計算方法も複雑なものでもない為、最初は混乱するかもしれませんが慣れてしまえば意外と簡単です。個人事業主としてこれから働こうという人は、とにかくこうした用語と計算に慣れてしまうという事が大事です。

